PKGとかソドワ世界のうちの子を取り扱うまったりさいと
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眠い。だるい。頭が痛い。
そんな苦痛の中でも、彼は無理やりに体を奮起させ、拳をサンドバッグに撃ち込んだ。
「(あぁ、これが終わったらレポートを仕上げねぇと。)」
目に流れ込みそうになる汗をふりはらいながらぼんやりそう思う。目の下の青黒い隈が、彼のここ最近の疲労を物語っていた。そしてこれは「最近」で済むものではなく、少なくとも一年は続く疲労だった。
それが彼が自由になれる条件。
それが彼が親から離れられる条件。
離れたあと、
何ができるかなんてわからないけれ ど。
「…くそがっ」
はめこんでいた耳栓がカツンッと床に落ちた。
「…にーちゃんっ」
「あ?…おぅ、嵐翠か。どした」
父親から望まれた鍛錬を達成し、一風呂あびたところに弟が顔を出す。翠嶺よりずっとボクシングに熱心で、鍛錬も大会も意気込んで取り組む中学生の弟。ジュニア大会にも何度も出ている…が、才能自体の問題なのか、意欲的ではない翠嶺の域に及ぶものにはどうにもなれないのが現実のようで。
才能ある方に気を向けたいのが父親の性のようで。
翠嶺にはいい迷惑だった。
嵐翠にかまってやればいいものを、と常々思う。
「最近、また鍛錬メニュー増えてない?見てみなよ、目の下。目自体も充血してるし。肌もひどいじゃん、そんなんでよく大丈夫だよね」
「言われなくたってわかってるよ!つったってどうしようもねぇんだよ、大学の課題だってあるんだからな…これからそっちに取り組まなきゃならねぇし、もう行くぜ?」
鍛錬と大学生活の両立、二年から三年に何事もなく進級すること。それが翠嶺を自由にする父親からの条件だ。五月頭に告げられたその時は、ほんのひととき心に光が差した。
けれどしかし、それはまやかしも同然だったのだ。
唐突に、一年時に比べて格段に増やされた鍛錬メニューを突き出された。どういうことだと問い詰めるまでもない、自由にする気などないのだ。大学生活を崩壊させることで、其方へ無理やりに引きずり込もうとしている。
そんなことを翠嶺自身が許すまでもなかった。
「やってやらなきゃならねぇんだよ、あのクソ親父に目にもの見せてやるためにもな」
条件を満たせば自由になれる。「昔」のような好きなことはできなくとも、少なくとも今嫌なことはやらなくてよくなる。
ならば、父親からの試練も何もかも、無理やりにでもこなしてやろうではないか。
「…ずるいよなぁ、にいちゃんは」
「あ?」
傍の通り過ぎざまに、グッと袖をつかまれる。
「なんで父さんは、にいちゃんばっかり可愛がるの?」
「可愛がられてなんかねぇよ、無理やり押し付けてきやがるだけだ」
「ならなんで!進んでやる僕には!喜んで受け入れる僕には!なんにも言ってきてくれないのさ!?」
「嵐翠?」
つかんできている手から弟の顔に目をやり、
「…なんて表情しやがってんだよ…」
ぞっとした。
「ずるいよ」
「ずるいよにいちゃんは」
「僕より才能があるからでしょ?」
「僕より期待できるからでしょ?」
「なら、
なんにもできなくなっちゃえ」
『翠嶺!足元!!』
ひゅっと現れた相棒が叫ぶ。
その時は、種からのびた蔓で足を絡めとられていた。動くことが不可能になる。
「おいっ、てめぇ、これ…!」
「逃がさないよ」
「最初はにいちゃんの代わりかもしれない。しれないけどね、
にいちゃんがなんにもできなくなれば、
にいちゃんが期待できなくなれば、
にいちゃんから全部奪えば、
父さんも僕に期待してくれるよね?」
『そうだ、搾取しろ』
嵐翠が気に入りだったネックレスから、蔦に似た霧状の何かが現れていく。
「そんなに嫌なら、はやく僕に渡してくれればいいんだよ、その、『期待』。
はやく、苦しみ切ってね、
にいちゃん」
一瞬、ふっと目の前が暗転する。
同時に足を拘束した蔓が消えたためにバランスを崩し、落下するように床に崩れた。
ギッと弟を睨みつければ、にんまりと笑うその顔。
「どんな呪いかな?あはははっ」
「嵐翠…まさか、
っ、この野郎っ!!!」
霧が笑みの形をつくり、嵐翠の横で嗤う。
自分にかかった呪いの得体が知れるのは、次の日、イヤホンをつけた時だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
五月八日
翠嶺、弟に「五感」の呪いを受ける。
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